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オリジナル創作の小ネタ置き場
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まさかの続き

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 この無駄にデカい豪邸と無駄に広い庭。
 家の回りをぐるりと囲むようにある高い柵の隙間から見えたその世界は、今まで歩いてきた住宅街のコンクリ道が嘘のようだった。この地域は高級住宅街で俺達野良が近付くのを一番毛嫌いするエリアなのでこんな豪邸があることを知らなかったよ、うん。この柵から侵入出来そうも無いし仕方なくコウと一緒に他の道は無いかと探して、一体何台車が停まっているのか分からない駐車場を覗いたり大変立派な門構えを前にすくんでみたり。
 いつまでもうろうろとしていられないが庭にさえ入れそうにもない。
「あそこに、居るんだけどなぁ」
「…けっ」
 灯りが漏れる窓の向こう、あそこに彼女たちが居るんだろう。
 でもまぁ運良く会えたとしてもこんな野良になつかれても迷惑だろうしここまでで止めておくのがいいのかもな。必死に毛繕いしたって薄汚い体だし。
「もう一度だけ会いたかったもんだけど、無理そうだね」
「ま、見たとこ金持ちみてーだしな。道理で変んなヤツだったわけだ」
「コウ、そんな言い方…」
「普通汚ねー野良犬になんか構わねぇって。……ん?おい、アレ」
「?」
 ピンと立てた耳を豪邸に向けたコウが見つめる先を追うと、そこには白い塊。
 玄関の前に居るそれは──うわ、ハスキーだ。
 ジッと静かにこちらを睨んでいる白銀のハスキー犬はこの家に飼われている番犬なんだろう。夜目でも街灯に当たり輝く毛並みはまるで発光しているように美しかった。
 しかしデカいぞあいつ。
 確実に此方を警戒している相手に緊張感が漂う、コウがピリピリとし始めて今にも吠え出しそうだ。
「コウ、あんま騒ぐなよ。人間にバレる」
「アイツがガン飛ばしてきてんだろ」
「こっちがガン飛ばされることしてんだよ」
 まだ何もしてはいないが向こうからすれば俺達は外敵だ。
 体を起こしゆっくりと歩んでくるハスキーは近付けば近付く程更に大きく見えて、情けないが俺はちょっとたじろいてしまう。狼か、こいつ。威圧感ハンパないです。
 柵越しに対峙した俺達の間に緊張が走るが、主に緊張してるのは俺達の方で相手は水のように冷たく静かな空気。上から下までじろじろと見られて風に揺れる銀がまた光る。
 なんだろう、俺達何をチェックされてるんだ。と気まずくなりコウに助けを求めるがコイツはコイツで威嚇してた。喧嘩売っちゃダメだって…。
 板挟み状態にお手上げとはいかないが顎を上げたら、本当、そのタイミング。
「あっ」
(あっ)
 3階の窓からひょっこりと顔を出したのはあの時の不思議な女の子、白い女の子。
 コウが「白い方か」とちょっと残念そうに言うのも気にせず、ぽかんとお互い見つめあっていると情けなく垂れ下がっていた尻尾が持ち上がった。
 相手も信じられない、と言いたげな表情からほわっと笑顔になって一度窓からその姿が消える。そして直ぐに興奮気味に「クローっ」と呼ぶ声にもう一人の黒い女の子も近くにいるのかな?
「クロ、この間の子が居るっ」
「へ?」
「雨の日に橋の下に居たワンちゃん!」
「うっそー!」
 間違いない、あの元気な声は彼女だ。
 出会った時のようにひょいと顔を覗かせた二人に俺は嬉しくなって、目の前のハスキーのことも忘れ腰を上げて尻尾を振ってしまったけど仕方ないよね!コウの尻尾も揺れてるし。
「ちょっと待っててね!」と二人声をハモらせて今度こそ視界から消えた彼女たちは、外に出てきてくれるのだろうか。期待してしまう俺達が顔を下ろすと冷ややかに見つめる白いハスキーと真正面から視線がぶつかり、今自分が置かれている状況があまりよろしく無いことを思い出し固まってしまった。
「…えっと…あのー…」
 自分の声ながら小鳥のさえずりかとツッコミたくなる小ささだが、この犬を目の前にしたらそうなるって。視線で殺すってこういう目のことを言うのかも…出会ってからまだ何も言ってこないのもまた怖い。
 そうこう思ってる内にハスキーの背中側、豪華な玄関の外灯が付き彼女たちがあの扉の向こうまで来てるのを知らせた。
 汚い野良だけど、また頭とか撫でてくれるかな。
「帰れ」
「え」
 低い、ドスの利いた声。
「二度と此処に近付くな。野良」
 吐き出された鋭い言葉と視線に言い返す間も無く、ハスキーが一度だけ吠えた。
 閑静な住宅街に響くその声は全てが凄まじく、気迫に追いやられるように完全に負けた俺達は目的達成を目の前にして文字通り尻尾を巻いて逃げ出してしまった。
 走り去る時に背中から「ワンちゃーん」と彼女たちの声が聞こえたが、あのハスキーをもう一度視界に納めるのは今は怖すぎる。とにかく、夜の街をがむしゃらに走った。








「あーあ…逃げちゃった」
「せっかくまた会えたのに…怖がらせちゃダメじゃない、カイ」
 野良犬たちが消えていった深い夜の道を残念そうに見つめるシロたちを純白のシベリアンハスキーのカイは一瞥して顔を反らすと、定位置である玄関脇に腰を降ろした。
 クロが口を尖らせながら室内に戻って行くのに続きながら、シロも「おやすみ」とカイの頭を撫でて消えていく。落とされた灯りに目を閉じたカイは、夜の静けさに耳を傾けながら夜を越すのだった。



「くっくっくっ…」
 そしてその様子を庭にある立派な木の上から見ていた一匹の黒猫は、笑いを噛み殺しながら愉快に尻尾をくゆらせた。









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エンたちヘタレすぎ

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