オリジナル創作の小ネタ置き場
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シロクロがシスター
カイが神父
エルが悪魔
という設定の小話3本
カイが神父
エルが悪魔
という設定の小話3本
---少女たちの祈り---
私たちの日常は、祈りに始まり祈りに終わる。
私たちが祈りを捧げるのは“神様”。
でも、他の純粋なシスターたちが祈る相手とは違う。私たちがお互い瞼の裏に思い浮かべている“神様”は、神父様ただ一人。
「今日も、神父様が怪我をしませんように」
「明日も、神父様が元気でありますように」
教会から洗礼を受けてもいないただの娘である私たちを育ててくれた神父様。
私たちが神父様をお助け出来ることは情けないけれど、少ない。だから、せめて神父様が帰ってこれる場所を守りたい。
この小さな教会は、神父様の、そして私たちの大切な場所。
---悪魔と悪魔のような男---
“都合がいいから”
忌々しいクソ野郎に一つ問いかけたときに返ってきた答えは今でも覚えている。
上質な魂は僕たちにとって極上の食事。
夢、希望、幸福――高め合った魂というものは、それはそれは脳がとろけそうになる程魅せられるものだ。そして、それを奪われる寸前の、絶望に満ちたヒトの表情も痺れる。
だけども最近はめっきりご馳走が減った。
一目見ただけで「うわ、まずそう」ってのばっか。
痩せ細った魂なんて木の枝のように何の魅力もありゃしない。ぐちゃぐちゃのどろどろに蠢く欲望、それも臭い。
己の信念を貫き通す、歪みのない煌く魂はないのか。それを貪りたいというのに。
この世界もつまらなくなったなぁ。
とか思っていた頃に、ソレは現れた。
近頃、同胞を片っ端から狩りまくってるという人間。
青年……というよりは少年。歳は十五・六くらい。無表情に僕を見ている瞳の奥に覗く憎悪。初めてその姿を見たときに、僕の身体は喜びで奮えたものだった。
嗚呼! なんて美味しそうなんだ!
今まで出会ったことのない美しい魂、それを手に入れたことを考えただけで頭がどうにかなりそうだった。それほどまでに強烈な印象。
今までヤられていった同胞もこれに惹かれて逝ったんだろう。
まぁそのあとどうなったかというと。
ぶっちゃけ死んだかと思った。自分が。
わりと呆気なくデタラメな力で捻じ伏せられて、羽と共に背中を踏みつけられた痛みで意識が戻った。我ながら情けない声を出した。
まだまだ遊び足りなかったけど、これで消滅かー我が人生一片どころか無茶苦茶悔いありまくりーとか諦めムードだったんだけども、ちょっと間を置いてから背中の圧迫感が無くなる。
そして、持ち掛けられたのだ。“契約だ。次にもう一度交えたとき、お前が勝てたら俺の魂をやる。それまではお前の命は俺が預かる。ということで俺の言うこと聞いてもらおう”ってね!
人間風情が悪魔に取り引き! つーか命令!
何コイツあり得ねーそんな馬鹿な話誰が受けるか死ね! って逃げてやろうかって思ったんだけど、まぁやっぱりすげぇ美味しそうな魂持ってるんだよ、その男。それを諦めるのも癪だし、人間に負けたっというのも癪だし。
なんてぐるぐる考えているだけ無駄な気がして“今の契約忘れるなよ! 次は殺す!”って啖呵切ったのが、今思えば道を踏み外した感が凄い。悪魔なのに。
あれから、結構時は流れた。
いつの間にか身長抜かれてるし(空飛べば僕の方が見下ろせるけど!)、いつの間にか変な役職(神父だなんて増々殺したくなる存在にランクアップしやがった!)もゲットしてた。
初めて出会った時の少年はもう居ない。
それでもこの男は相変わらず悪魔を狩り続けているし、僕は相変わらず勝負を挑んで負け続けている。
そして、彼の魂は相変わらず煌々としている。
契約通り、負けた日から次の勝負までの間は男の言いつけを守る。基本的には教会で男の帰りを健気に待つ双子の少女のお守りをすることだけど。
この双子、僕が悪魔だということを知らない。
というかこの少女たちもまた変わった存在で、良くも悪くも“悪魔”の影響を受けない娘だった。普通の人間は悪魔の声を聞いただけでも発狂して死んでいくってのにね。だから、悪魔と知らずに寄っていってしまうのだ。僕が言うのもなんだけど、悪魔って外面超良いからね。あのお人好しというより危機能力が欠如している双子は悪魔からしたら一番簡単な餌だった。
あの男曰く、あの双子は真白すぎる、だそうだ。
魂としては確かに質が良さそう。だけど、イマイチ悪魔が好むものでもない。ほら、綺麗すぎる水は毒になるみたいな、アレ系統の魂。どちらかというとあの少女の魂は天使連中が狙ってる系。
それでも悪魔狩りなんぞやってる男は恨みを買いまくる。
そのとばっちりが少女たちにやってこないように、悪魔の僕をお守りにしやがった。
わざわざ僕にそんな契約を交わさせるまでに大事な存在みたいだからあの男の身内かと思ったがそうでもないらしい。
身寄りを無くした双子を引き取り、男と双子は教会で共同生活をしている。
あの男を“神様”としてにこにこと笑う双子と、何故か一緒に食事をしている悪魔の僕。
珍妙な景色が日常化していた中で、ふとあの男に問いかけたことがある。
「アンタはなんで神父なんてやってるの」
「都合がいいから」
悪魔を殺すのに一番近い場所なんだ。ここは。
そう言って唇を歪めた男に、唾を吐く。
そこらの悪魔なんかより、よっぽど悪魔だよ。アンタ。
---神父の独白---
目の前の悪魔が地に伏すのを見下ろすのは何十回目か。
こちらの持ち出した無茶苦茶な契約を受け入れてから、何年経ったのか。十年は経ったかもしれない。
馬鹿正直。
とでもいうべきか。
どれだけ俺の魂を喰いたいんだろう、この悪魔は。
悪魔からすれば極上の魂だろうが、俺からすれば醜い下劣な魂だ。真っ当に生きることを諦め一心に悪魔を狩り続けるだけの存在。
引き返すことの許されない道を歩き続ける。
終わりがあるならば俺の死。その時この醜い魂は、憎むべき悪魔に喰われる。上等じゃないか、意地でも死んでやるものか。
そして、勝負が終わればまたこの美しい悪魔は双子の少女と共に居る。
あの悪魔は分かっている。
あの少女たちが生きている限り、俺の魂は極上に煌き続けることを。
そう、敵は裏切らない。
俺を殺すことに真っ直ぐなこいつは裏切らない。
「次はお前を殺す」
睨み上げてくる瞳が俺を貫く。
それこそ、俺たちはお互いに至高の存在というやつなんだろう。
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