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オリジナル創作の小ネタ置き場
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シロが病気。
死ネタ。
苦手な人はお読みになられぬよう(´・ω・`)

あとカイ←シロ。たぶん。












---




 目が覚めると、目の奥が痛くなるまでに白い天井があった。
 覚醒しきれない意識で視線だけを動かすと、白いカーテンと、白い壁と、白いドアと──このベッドに寝かされている私も"白"。












- 笑って -











 私は、普通ではなかった。
 生まれつきのこの白い髪も魚の腹みたいな不健康に青白い肌も、異端。双子の妹はお父さん譲りの綺麗な黒曜の髪でお母さん譲りの藍玉の瞳。私だけが、白で、唯一の色はこの禍々しい緋の瞳だけという気味悪さだった。
 五歳のとき、お父さんとお母さんと一緒に病院の先生から何だか長い病名を告げられたけど、憶える気にもなれなかったし、それが無駄なことだけは幼心に薄々気付いてた。

 多分私は長くない。

 単純に異端だから、普通の生活は出来ないってこと。
 小さい頃から体調はよく崩していたし、周りからの好奇の視線で精神的にも弱かった。その度にいつも妹が守ってくれて、泣いてくれた。
 こんな身体は嫌だけど、それでも妹がこの病気じゃなくて良かった。お姉ちゃんらしいこと、今まで何も出来なかったけど、妹がこの病気を患わなくて本当に良かったんだもの。






 十一歳の、もうすぐ誕生日を迎えようとしていたときに、私の身体がダメになってこの特別病棟に入った。
 気味が悪いまでに白い部屋と白い私。もうこの白い部屋から出れなくなるんだなぁとぼんやり思ったけど、でも、それでもいいやとこのベッドの上で十一回目の誕生日を家族で向かえた。みんな笑ってたけど、心は、窓の外の雨のように泣いていたのを今でもハッキリ憶えてる。








 それから数ヶ月。
 窓から見える桜が美しく咲いた春の日に、私は初恋をした。
 桜の木の下で、誇らしげに咲く花を見上げる横顔に目を奪われた。
 風に散る桜の花びらの中。日の光で輝くのは白い髪、なんだろうけどきらきらと銀に輝く髪と、その隙間から見えたのは私と同じ筈なのに、彼の緋は本当に綺麗だったの。

 彼は私より四つ年上の先輩。この病棟に居るって意味の先輩でもある。実質、同じ病気の人を隔離するような施設だった此処で、家族以外に初めて心を許せた人だった。
 あまり喋らない人だったけどね。
 元々私も喋るタイプでも無かったんだけど、たくさん話したくてぽんぽんと話題を振った。質問に対して彼は答えてくれて、それが嬉しくてまた私は質問をした。こっそり病室を抜け出して彼の部屋へ遊びに行くこともあったし、それでも彼は嫌な顔を一つもせずに私を受け入れてくれた。あの綺麗な緋の瞳を少しだけ細めて。


 病気とは別に苦しかった胸のつっかえが取れたのは、それから半年後くらい。
 桜は散り、暑い夏を越え、秋を向かえた季節。病室から見えるあの桜の木で私は見てしまった。
 彼が笑った。
 いつも寄り添うように隣に居た人へ、穏やかであたたかい眼差しで。
 私に向けられたものじゃなかったその笑顔に、小さな想いが実らないことを悟り自然と涙が流れたけど悲しくなかったんだ。なんだろうね、彼処だけ切り取られたみたいに、一つの絵画みたいに、綺麗。それをずっと見ていたいって思っちゃうくらいに、あの空間が特別な空気。
 決して私には向けられることのない表情なんだなぁ。

 初めて彼を知ったのも、彼を諦めたのも、その横顔だった。








 その年、彼が亡くなった。
 桜の木の下で見た横顔が最後だった。
 あの後に彼は体調を崩して、面会出来る状態じゃなくなって、それからあっという間で。
 まだ近しい存在の人の"死"を理解しきれずに受け入れられなかった私は呆然とするしかなくて、ただ無駄に時間を消耗していった。

 それから数日後、意外な訪問者が来た。
 彼の隣の人。
 初めて私の所へ面会に来てくれたその人は、はじめましてと笑った。歳は彼と同じで、大人びた雰囲気を持った彼と同じくその人もまた十五歳には思えない、不思議な人だった。淡い、例えるならばそんな人。病人の私よりも淡く儚く映る。だからこそ左耳に光る赤い石のピアスが異常に浮き出ていたように凄く印象に残ってる。

 ここから桜の木が見えるんだね。

 窓際に立ったその人が溢した言葉。そして、その人から渡されたのは桜の栞──これ、彼の。

 彼は本が好きで、それを使っていたんだよ。

 知ってる。
 遊びに行ったとき、いつも本を読んでいたもの。

 うん。

 私が部屋に入ると、この栞を挟んで、私の話を聞いてくれたもの。

 うん。

 だから、この栞が無いと、彼が困っちゃうよ?本読めなくなっちゃう。

 …。
 もう、使う予定が無いみたいなんだよね。
 キミが持っていてくれた方が、彼も喜ぶよ。

 そう言って抱き締めてくれたその人の胸で、淡い桜に閉じ込めた私の想いが溢れ出して、栞を握り締めて大声で泣いた。怖かった、もう、二度と会えないことが怖かった。
 窓から見える桜の木は枯れていた。










 春に妹は中学へ上がった。
 お見舞いに来るとき、毎回新しい本を持ってきてくれて、いつもニコニコしてる。
 この間はミステリー、その一つ前は動物図鑑。ジャンルは様々で此処を図書館にするんだとはにかんだ姿が眩しかった。
 いつか絶対この病室から出れると信じて疑わなかった妹に、私の退院は無理だと何度もお父さんたちが言い聞かせたんだって。お父さんたちも辛かっただろうに、妹は納得せず癇癪起こして。でも私自身の口から伝えたら、お母さんと同じあの青い瞳からぼろぼろと大粒の涙を溢して、受け入れてくれた。
 でも諦めていないのも、わかったよ。私、お姉ちゃん、だもんね。
 妹の頭を撫でたら、今更だけど自分の腕の白さにぎょっとした。








 十五歳になって、珍しく雪が積もった年明け。
 この頃には自力で歩くことが困難になっていて、誰かの補助が無いと移動すら出来なかった。手押しの車椅子さえ、私には扱えなくなっていた。
 いつも病室じゃ気が滅入るだろう、とお父さんが押してくれた車椅子に乗ってホールに出ると誰も居なかった。この病棟に、私しか居ないんだ。珍しい病気らしいから元々ここに容れられる人は多くなかったけど。
 壁一面硝子になってるそこから見えた銀世界に、ふと彼を思い出した。
 早いなぁ、彼が亡くなった歳と、同じなんだ。私。
 私の記憶の中で微笑む彼は、やっぱり横顔だった。

 目を細めて、銀世界の向こうを見る。
 太陽の光を反射して輝くそれは目には刺激が強くて、一度固く瞼を閉じたつもりだった。

















 ──そして私は白い部屋で目を覚ます。
 今はいつだろう。
 揺れる白いカーテンの向こうは目を奪うほどに爽やかな青空だった。
 四角く切り取られたその空に手を伸ばそうと思ったけど、力が入らない。腕と顔に違和感。右腕から伸びたチューブの先の点滴。顔に固定された呼吸器。生かされている、んだなぁ。
 体を起こさなきゃ、あの桜の木が見えないのに。
 ぼんやりする頭で、そんなことを考えていたと思う。

 お母さんが、握ってくれていた左手の温もりが気持ち良くて、瞼を閉じた。











 十六の春。
 桜は満開だった。









 彼が、笑った。














---











また別種のパロですた。

カイシロかカイ←シロをいつか書いてみたかったのだが、こんな形になってしもうた。最終的に「?→←カイ←シロ」なのかなって構図だけど(おい)

先生としてエンを出すのも考えてたんですがアデューしました←

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