オリジナル創作の小ネタ置き場
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エルとミコ
「……え?」
本日の晩御飯は同居している幼女からのリクエストで作った特製オムライス。中はチキンライス仕立てでふわふわとろとろな卵で包んだそれは、スープとサラダも添えて作った本人であるエルも満足な仕上がりであった。
ペロリと平らげる他の二人を見てると、やはりそれは素直に嬉しい。
そんな夕食を終えて、鼻歌交じりに食器洗いをするエルに夕飯リクエストをした張本人──同居中の幼女、ミコがやってきたことが事の始まりだ。
「……え?」
またもう一度、エルから間抜けな声が出た。
声だけでなく豆鉄砲を食らった鳩のように間抜けな顔のエルとは対照的に、輝く太陽のような笑顔でエルを見上げるミコが隣にいる。
とりあえず水道の蛇口を閉めて、手を拭う。
「え、ごめん、もう一回言ってくれるかな?」
「あのね、バレンタインデーあるでしょー」
──バレンタイン。
菓子メーカーの陰謀と策略が絡み合うどろどろのイベント、に乗じて世の恋人たちやら恋する乙女たちやらが闘志を煮えたぎらせる運命と審判の日が今年もやってくる。
因みに去年末のクリスマスイベントでのフラグを回収しておかないと中々発展しないのがバレンタインイベントだ。クリスマスで中途半端な立ち位置になるとこの時期での起死回生は中々至難の技となる恐ろしいイベント。
かと言っても今は「友チョコ」や「逆チョコ」など手軽に気軽に友情を深めるイベントでもあるので、更に菓子メーカーの思うつぼである。
しかしミコからそんな言葉が飛び出すとは思っていなかったので、バレンタインはどちらかと言えばもう一人の同居人の誕生日だったことの方が記憶に根強く居座ってることに内心舌打ちしつつも、ミコに対してはエルは純粋に「あーミコも女の子だねぇ」と感慨深く頷いていた。最初の最初までは。
ちょっと待て、目の前の少女は今何て言った?
「うん。再来週の火曜日だね。後10日あるね」
「わたしもね、チョコ作りたいの!」
「いや、うん、良いことだと思うよ、うん」
「だからねお兄ちゃん、作り方教えて!本番まで内緒にしてびっくりさせたいんだー!」
……
…え、この段階で僕はミコからのサプライズチョコリスト外れてない?
自他共に認めるまでにミコを溺愛しているエルは言葉に出来ない絶望を今味わっている。目の前で天使のようにニコニコ笑う少女の眩さにくらみつつ、絶望と言う名の崖っぷちからの紐無しバンジーで猛獣渦巻く混沌の闇に飛び降りた気分である。エルにとってはそれだけの絶望なのだ。
「…だ、ダレにあげるノかな?」
「お父さんとー、カイお兄ちゃん!」
そしてエルの毛の生えた心臓は音を立てて爆発した。
──バレンタインデーまであと10日…
*****
本日の晩御飯は同居している幼女からのリクエストで作った特製オムライス。中はチキンライス仕立てでふわふわとろとろな卵で包んだそれは、スープとサラダも添えて作った本人であるエルも満足な仕上がりであった。
ペロリと平らげる他の二人を見てると、やはりそれは素直に嬉しい。
そんな夕食を終えて、鼻歌交じりに食器洗いをするエルに夕飯リクエストをした張本人──同居中の幼女、ミコがやってきたことが事の始まりだ。
「……え?」
またもう一度、エルから間抜けな声が出た。
声だけでなく豆鉄砲を食らった鳩のように間抜けな顔のエルとは対照的に、輝く太陽のような笑顔でエルを見上げるミコが隣にいる。
とりあえず水道の蛇口を閉めて、手を拭う。
「え、ごめん、もう一回言ってくれるかな?」
「あのね、バレンタインデーあるでしょー」
──バレンタイン。
菓子メーカーの陰謀と策略が絡み合うどろどろのイベント、に乗じて世の恋人たちやら恋する乙女たちやらが闘志を煮えたぎらせる運命と審判の日が今年もやってくる。
因みに去年末のクリスマスイベントでのフラグを回収しておかないと中々発展しないのがバレンタインイベントだ。クリスマスで中途半端な立ち位置になるとこの時期での起死回生は中々至難の技となる恐ろしいイベント。
かと言っても今は「友チョコ」や「逆チョコ」など手軽に気軽に友情を深めるイベントでもあるので、更に菓子メーカーの思うつぼである。
しかしミコからそんな言葉が飛び出すとは思っていなかったので、バレンタインはどちらかと言えばもう一人の同居人の誕生日だったことの方が記憶に根強く居座ってることに内心舌打ちしつつも、ミコに対してはエルは純粋に「あーミコも女の子だねぇ」と感慨深く頷いていた。最初の最初までは。
ちょっと待て、目の前の少女は今何て言った?
「うん。再来週の火曜日だね。後10日あるね」
「わたしもね、チョコ作りたいの!」
「いや、うん、良いことだと思うよ、うん」
「だからねお兄ちゃん、作り方教えて!本番まで内緒にしてびっくりさせたいんだー!」
……
…え、この段階で僕はミコからのサプライズチョコリスト外れてない?
自他共に認めるまでにミコを溺愛しているエルは言葉に出来ない絶望を今味わっている。目の前で天使のようにニコニコ笑う少女の眩さにくらみつつ、絶望と言う名の崖っぷちからの紐無しバンジーで猛獣渦巻く混沌の闇に飛び降りた気分である。エルにとってはそれだけの絶望なのだ。
「…だ、ダレにあげるノかな?」
「お父さんとー、カイお兄ちゃん!」
そしてエルの毛の生えた心臓は音を立てて爆発した。
──バレンタインデーまであと10日…
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