オリジナル創作の小ネタ置き場
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エル誕2012
「ハッピーバースデー!!」
5月13日───
目覚めの一発が
これでした。
この春、王華高等学校最高学年になった彩月エルは同居人である如月カイと月宮ミコと共に住まう小さなアパートでこの日を迎えた。
最近ではあまり新鮮味の無いイベントの誕生日だが、数日前から自身の回りを落ち着かない様子でそわそわとしていたミコに忘れていたイベントを自覚せざるを得ない環境ではあった。
一体何をしてくれるのかとつい期待してしまう。
代わり映えしない日常へ、少女が与えてくれる刺激に自然とエルの口角が上がるものだ。ついでに視界に入ったもっさり眼鏡に対しては唾を吐いておくが。
そして、誕生日当日。
冒頭に繋がる。
いつも設定している携帯のアラーム音が鳴る前に、今日は可愛らしいミコの声が目覚まし音。寝起きに聞くには少々声量があったが、素晴らしい目覚ましだったとエルは後に語る。
ミコが眠るベッドの横に布団を敷いて眠り朝早く起きて家事をするのだが、今日は既に起床したミコがニコニコ笑いながらエルの顔を覗き込んでいた。これも最高の目覚めだったとエルは後に壮大に語る。
「おはようっ」
「お、はよう……」
ぱちくりと瞬くと反転したミコが小首を傾げて白い歯を覗かせていた。
「んふふーっ一番最初におめでとう言えたー」
「…あり、がと…」
「顔洗ってきてね、私朝ごはん作るから!」
「へ?」
眠気が吹き飛んだとはいえエルがミコの言葉をそのままの意味で理解する前に鞠が跳ねるように部屋から出て行った少女の背中を、エルはぽかんと間抜け面で布団の中から見送ったのだった。
しかしこのままという訳にもいかず言われるがまま布団からのそりと這い出たエルはいつもは枕元に置いておく自分の携帯が見当たらないことに気付くが、まぁ目覚ましとして使う程度なので放っておくことにする。
自室から洗面所に行くには一度リビングを抜ける造りになっているのだが、そのリビングで信じられないモノを見た。
「おはよう」
朝には超絶弱いもっさり眼鏡がそこに居た。しかも優雅にコーヒーなんかを啜っているもんだからどうしたもんかとエルは目を剥く。
いつもは叩き起こしても中々起きないくせに。
有り有りと顔から滲むエルの疑問に答えるように、カイはコーヒーをテーブルに置いた。
「たまには早く目が覚めることもある」
そうか。これが世に言うドヤ顔か。そしていつも起きられるようにしろよな、と心の中で毒吐きつつ朝から絡みにいくのもダルいのでエルは洗面所へ。そして顔を洗いながら「今日、日曜なのに早起きしたのかあの眼鏡」と今更気付いた。今日は槍が振るかもしれないと身震いしていたら、ちょんちょんとスウェットを引かれる感触に振り向けば満面の笑みのミコ。
「お兄ちゃん、脱いで!」
「はぁ!?」
「パジャマ洗うから脱いでーっ」
「ああ…洗濯物…、いいよ、僕がやるから」
「だめ。今日は私が家事やるの!お兄ちゃんはゆっくりしてて!」
「わわわわわわわかった!わかったから降ろさないで!!」
この小さな腕にどれだけ力があるのかと思うような勢いでスウェットを引かれ、軽く本気で焦った。一緒に風呂には入っているが、それでも焦った。
洗面所の騒がしい攻防を横目にカイはまた一口コーヒーを啜る。
先にも言われた通り「ゆっくりしてて」とリビングの座椅子に座らされて、ついでに置かれた牛乳。
どうやら誕生日だからか、今日はミコが家事をやってくれるらしい。なるほど…数日前から自分の後を追い掛けて来ては熱心に観察されたが、彼女なりに仕事を覚えようと必死だった訳だ。なんとも微笑ましいことではあるが、そう分かってもキッチンを右に左にちょこちょこと動き回るミコの動きに、牛乳を片手にエルの視線は落ち着かなそうにその姿を右に左に追いかける。
少しばかり高い位置にある料理器具を取ろうと手を伸ばすミコに腰を上げそうになるが、察したミコにキッと睨まれたら笑顔をひきつらせて座り直すしかない。
「…でも気になる」
「ミコの贈り物なんだ、今日は家事を任せるんだな」
「アンタは何すんの」
「今更何かしてもらいたいのか」
「今更いらんわ気持ち悪い」
何も無い日だろうが誕生日だろうがこの二人の毒の吐合はいつものこと。
その間も皿だ箸だと準備していくミコが作った朝食がテーブルに並べられれば、エルは目尻を下げてご機嫌モードに突入だ。目に入れても痛くない程に溺愛する少女の手作り朝食、これ程幸せな朝食があったであろうか。
美味しいと口に運ぶエルに満足したミコも嬉しそうで、殻の入ったカルシウム満点な卵焼きをつつきながらカイは顔を上げれば向かいに座るエルと丁度目が合った。
「あぁ、誕生日おめでとう」
「ん?ありがとう」
---
5月13日───
目覚めの一発が
これでした。
この春、王華高等学校最高学年になった彩月エルは同居人である如月カイと月宮ミコと共に住まう小さなアパートでこの日を迎えた。
最近ではあまり新鮮味の無いイベントの誕生日だが、数日前から自身の回りを落ち着かない様子でそわそわとしていたミコに忘れていたイベントを自覚せざるを得ない環境ではあった。
一体何をしてくれるのかとつい期待してしまう。
代わり映えしない日常へ、少女が与えてくれる刺激に自然とエルの口角が上がるものだ。ついでに視界に入ったもっさり眼鏡に対しては唾を吐いておくが。
そして、誕生日当日。
冒頭に繋がる。
いつも設定している携帯のアラーム音が鳴る前に、今日は可愛らしいミコの声が目覚まし音。寝起きに聞くには少々声量があったが、素晴らしい目覚ましだったとエルは後に語る。
ミコが眠るベッドの横に布団を敷いて眠り朝早く起きて家事をするのだが、今日は既に起床したミコがニコニコ笑いながらエルの顔を覗き込んでいた。これも最高の目覚めだったとエルは後に壮大に語る。
「おはようっ」
「お、はよう……」
ぱちくりと瞬くと反転したミコが小首を傾げて白い歯を覗かせていた。
「んふふーっ一番最初におめでとう言えたー」
「…あり、がと…」
「顔洗ってきてね、私朝ごはん作るから!」
「へ?」
眠気が吹き飛んだとはいえエルがミコの言葉をそのままの意味で理解する前に鞠が跳ねるように部屋から出て行った少女の背中を、エルはぽかんと間抜け面で布団の中から見送ったのだった。
しかしこのままという訳にもいかず言われるがまま布団からのそりと這い出たエルはいつもは枕元に置いておく自分の携帯が見当たらないことに気付くが、まぁ目覚ましとして使う程度なので放っておくことにする。
自室から洗面所に行くには一度リビングを抜ける造りになっているのだが、そのリビングで信じられないモノを見た。
「おはよう」
朝には超絶弱いもっさり眼鏡がそこに居た。しかも優雅にコーヒーなんかを啜っているもんだからどうしたもんかとエルは目を剥く。
いつもは叩き起こしても中々起きないくせに。
有り有りと顔から滲むエルの疑問に答えるように、カイはコーヒーをテーブルに置いた。
「たまには早く目が覚めることもある」
そうか。これが世に言うドヤ顔か。そしていつも起きられるようにしろよな、と心の中で毒吐きつつ朝から絡みにいくのもダルいのでエルは洗面所へ。そして顔を洗いながら「今日、日曜なのに早起きしたのかあの眼鏡」と今更気付いた。今日は槍が振るかもしれないと身震いしていたら、ちょんちょんとスウェットを引かれる感触に振り向けば満面の笑みのミコ。
「お兄ちゃん、脱いで!」
「はぁ!?」
「パジャマ洗うから脱いでーっ」
「ああ…洗濯物…、いいよ、僕がやるから」
「だめ。今日は私が家事やるの!お兄ちゃんはゆっくりしてて!」
「わわわわわわわかった!わかったから降ろさないで!!」
この小さな腕にどれだけ力があるのかと思うような勢いでスウェットを引かれ、軽く本気で焦った。一緒に風呂には入っているが、それでも焦った。
洗面所の騒がしい攻防を横目にカイはまた一口コーヒーを啜る。
先にも言われた通り「ゆっくりしてて」とリビングの座椅子に座らされて、ついでに置かれた牛乳。
どうやら誕生日だからか、今日はミコが家事をやってくれるらしい。なるほど…数日前から自分の後を追い掛けて来ては熱心に観察されたが、彼女なりに仕事を覚えようと必死だった訳だ。なんとも微笑ましいことではあるが、そう分かってもキッチンを右に左にちょこちょこと動き回るミコの動きに、牛乳を片手にエルの視線は落ち着かなそうにその姿を右に左に追いかける。
少しばかり高い位置にある料理器具を取ろうと手を伸ばすミコに腰を上げそうになるが、察したミコにキッと睨まれたら笑顔をひきつらせて座り直すしかない。
「…でも気になる」
「ミコの贈り物なんだ、今日は家事を任せるんだな」
「アンタは何すんの」
「今更何かしてもらいたいのか」
「今更いらんわ気持ち悪い」
何も無い日だろうが誕生日だろうがこの二人の毒の吐合はいつものこと。
その間も皿だ箸だと準備していくミコが作った朝食がテーブルに並べられれば、エルは目尻を下げてご機嫌モードに突入だ。目に入れても痛くない程に溺愛する少女の手作り朝食、これ程幸せな朝食があったであろうか。
美味しいと口に運ぶエルに満足したミコも嬉しそうで、殻の入ったカルシウム満点な卵焼きをつつきながらカイは顔を上げれば向かいに座るエルと丁度目が合った。
「あぁ、誕生日おめでとう」
「ん?ありがとう」
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